「SESで高収入を目指したいけど、実際のところどうなの?」
そんな疑問をお持ちのあなたへ。SESの高還元求人の仕組みから、メリット・デメリット、市場の現状と将来性まで、この記事で徹底解説します。SESでキャリアアップを目指せるのか、本当に高収入を得られるのか、その実態を知り、自分に最適なキャリアプランを見つけるための情報を提供します。具体的なキャリアパス例や、優良企業の見極め方など、実践的な内容も充実しています。
1. SESとは
SESとは、System Engineering Service(システムエンジニアリングサービス)の略称で、企業や組織に対して、ITシステムの設計・開発・運用・保守などを技術支援するサービスを指します。具体的には、クライアント企業のプロジェクトにエンジニアが参画し、技術力や専門知識を提供することで、プロジェクトの成功を支援します。
1.1 SESの契約形態
SESの契約形態は、一般的に以下のようになります。
- SES企業とエンジニア間で雇用契約を締結
- SES企業とクライアント企業間で業務委託契約を締結
エンジニアは、SES企業に雇用されながら、クライアント企業のプロジェクトに参画し、技術支援を行います。そのため、給与はSES企業から支払われ、クライアント企業とは直接的な雇用関係にはありません。
1.2 SESの特徴
SESには、以下のような特徴があります。
1.2.1 メリット
- 様々なプロジェクトに参画できるため、スキルアップやキャリアアップを目指しやすい
- 市場価値の高いスキルを身につけることで、高収入を得られる可能性がある
- プロジェクトの開始・終了が明確であるため、ワークライフバランスを調整しやすい場合がある
1.2.2 デメリット
- クライアント企業の都合で、プロジェクトが変更・中止になる可能性がある
- 雇用が不安定になりやすい
- SES企業によっては、エンジニアのスキルアップやキャリア支援が不足している場合がある
1.3 SESの業務内容
SESの業務内容は、多岐に渡り、システム開発の上流工程から下流工程まで、幅広い業務に携わることができます。主な業務内容は以下の通りです。
工程 | 業務内容 |
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要件定義 | クライアントの要望や課題をヒアリングし、システムに要求される機能や性能を明確にする |
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設計 | 要件定義に基づき、システムの全体構成や機能を設計する |
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開発 | 設計書に基づき、プログラミング言語を用いてシステムを開発する |
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テスト | 開発したシステムが設計書通りに動作するかを確認する |
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運用・保守 | 開発したシステムを安定稼働させるための運用・保守業務を行う |
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1.4 SESと派遣の違い
SESと混同されがちな働き方に、「派遣」があります。どちらもクライアント企業で働くという点では共通していますが、契約形態や業務内容が異なります。
項目 | SES | 派遣 |
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契約形態 | SES企業とクライアント企業間で業務委託契約を締結 | 派遣会社とクライアント企業間で 労働者派遣契約を締結 |
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指揮命令者 | SES企業 | クライアント企業 |
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業務内容 | システム開発に関する専門的な業務 | クライアント企業の指示に従って、事務作業や製造作業などを行う |
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SESは、クライアント企業に対して技術支援を行うサービスであるのに対し、派遣は、労働者をクライアント企業に派遣するサービスです。そのため、指揮命令者は、SESの場合はSES企業、派遣の場合はクライアント企業となります。また、業務内容も、SESは専門的な技術を必要とする業務が中心であるのに対し、派遣は、事務作業や製造作業など、専門性を必要としない業務が中心となります。
SESについて詳しく知りたい方は、独立行政法人 情報処理推進機構のウェブサイトも参考にしてください。
2. SESの高還元求人の実態
「SESは高収入」というイメージを持つ方もいるかもしれません。確かに、SES業界では、高還元を謳う求人を多く見かけます。しかし、その実態は、求人ごとに大きく異なり、注意深く見極める必要があります。ここでは、SESの高還元求人の実態、そして、その仕組みや注意点について詳しく解説していきます。
2.1 高還元を実現する仕組み
SES企業は、エンジニアを企業に派遣し、その対価として報酬を得ています。この報酬から、エンジニアへの給与や会社の運営費などを差し引いたものが、利益となります。高還元を実現するためには、この利益率を高く保つ必要があるのです。
利益率を高く保つための主な方法としては、以下の2つが挙げられます。
- エンジニアへの還元率を下げる
- 顧客企業からの請求単価を上げる
当然ながら、エンジニアとしては、自分の給与が高くなるような還元率の高い案件に魅力を感じます。しかし、高還元を実現するために、顧客企業への請求単価を上げすぎると、他のSES企業との競争で案件を獲得することが難しくなる可能性があります。
そこで、多くのSES企業は、還元率と請求単価のバランスを調整しながら、エンジニアにとっても魅力的で、かつ、顧客企業にも選ばれるような価格設定を目指しています。
しかし、中には、エンジニアへの還元率を極端に下げたり、顧客企業に不必要な費用を請求したりするなど、不適切な方法で高還元を実現しようとする悪質な企業も存在します。そのため、求人に記載されている還元率だけを鵜呑みにせず、他の条件と合わせて総合的に判断することが重要です。
2.2 提示される還元率の注意点
SES業界では、還元率は「エンジニアの給与 ÷ 顧客企業からの請求単価 × 100」で算出するのが一般的です。例えば、顧客企業からの請求単価が80万円で、エンジニアの給与が50万円だった場合、還元率は「50万円 ÷ 80万円 × 100 = 62.5%」となります。
しかし、求人広告で提示されている還元率は、必ずしもこの計算式に則って算出されているとは限りません。中には、各種手当を含めずに計算していたり、特定の条件下でのみ適用される還元率を表示していたりするケースもあるため、注意が必要です。
高還元求人に応募する際には、以下の点をしっかり確認するようにしましょう。
- 還元率の計算方法(どの費用を含んで計算されているのか)
- 適用条件(特定の期間だけ適用されるのか、それとも継続的に適用されるのか)
- 経費の負担割合(交通費や通信費などの経費は自己負担なのか、それとも会社負担なのか)
これらの情報を事前に確認しておくことで、思っていたよりも実際の給与が低かったという事態を防ぐことができます。また、複数の求人を見比べて、還元率だけでなく、仕事内容や勤務条件なども考慮した上で、自分に合った求人を選ぶようにしましょう。
厚生労働省は「労働者派遣事業と請負による事業との区分に関する基準」を定め、事業者に対して適切な運用を求めています。あわせて確認しておきましょう。
3. SESでキャリアを築く
SESで働くことは、様々なプロジェクトに参画することで幅広いスキル・経験を積むことができ、自身のキャリアアップに繋がる可能性を秘めています。ここでは、SESで得られるスキル・経験、具体的なキャリアパス例、SESのキャリアにおけるメリット・デメリットについて解説していきます。3.1 SESで得られるスキル・経験
SESの仕事を通して、技術的なスキルだけでなく、コミュニケーション能力や問題解決能力など、ビジネスパーソンとして必要なスキルを身につけることができます。3.1.1 技術的なスキル
①プログラミングスキル: Java、Python、PHPなど、プロジェクトで求められるプログラミング言語の習得はもちろんのこと、開発経験を通じて、より実践的なスキルを身につけることができます。
②データベース:Oracle、MySQLなどのデータベースの構築、運用、管理に関する知識や経験を積むことができます。
③ネットワーク:ネットワークの設計、構築、運用、保守に関する知識や経験を積むことができます。
➃セキュリティ:セキュリティ対策ソフトの導入、運用、管理や、情報セキュリティに関する知識を深めることができます。
3.1.2 ビジネススキル
⑤コミュニケーション能力:チームで仕事をするSESでは、エンジニア同士はもちろん、営業担当や顧客とのコミュニケーションが不可欠です。
⑥問題解決能力:プロジェクトを進める中で様々な問題が発生しますが、その原因を突き止め、解決策を実行する能力が求められます。
⑦時間管理能力:納期までに成果物を完成させる必要があり、限られた時間の中で効率的に業務を進める計画性と自己管理能力が求められます。
3.2 キャリアパス例
SESで経験を積んだ後、様々なキャリアパスを描くことができます。ここでは代表的なキャリアパスとして、エンジニア、コンサルタント、マネージャーの3つを紹介します。3.2.1 エンジニア
SESで様々なプロジェクトを経験することで、特定の技術分野に特化したスペシャリストを目指すことができます。
【スペシャリストの例】
①データベースエンジニア:データベースの設計、構築、運用、管理などを専門に行う。
②セキュリティエンジニア:システムやネットワークのセキュリティ対策を専門に行う。
③インフラエンジニア:サーバーやネットワークなど、システムの基盤部分を構築、運用、管理などを専門に行う。
また、経験やスキルによっては、フリーランスのエンジニアとして独立するという選択肢もあります。
3.2.2 コンサルタント
SESで培った技術力や業務知識を活かして、ITコンサルタントとして活躍することもできます。 【ITコンサルタントの例】業務システムの導入や改善の提案、IT戦略の立案、実行の支援、IT投資に関するアドバイス
3.2.3 マネージャー
プロジェクトリーダーやプロジェクトマネージャーなど、マネジメントの経験を積むことで、将来的には管理職として活躍することも可能です。【管理職の例】
・プロジェクトマネージャー:プロジェクトの進捗管理、品質管理、メンバーのマネジメントなどを統括する。
・システムエンジニアリングマネージャー:システム開発プロジェクト全体の計画、実行、管理などを統括する。
3.3 SESのキャリアにおけるメリット・デメリット
SESで働くことは、キャリアを築く上でメリットだけでなく、デメリットも存在します。
3.3.1 メリット
・様々なプロジェクト経験:多様なプロジェクトに参画することで、幅広いスキル・経験を積むことができます。・キャリアチェンジの機会:様々な業界、職種のプロジェクトに携わることができるため、自身のキャリアプランに合わせた経験を積むことができます。未経験の分野に挑戦することで、キャリアチェンジの可能性を広げることも可能です。
・スキルアップの機会:企業によっては、資格取得支援制度や研修制度が充実しており、スキルアップを目指しやすい環境があります。
3.3.2 デメリット
・雇用不安定:プロジェクト単位での契約となるため、プロジェクト終了と同時に雇用契約が終了する可能性があります。・収入の不安定さ・プロジェクトが途切れた場合、収入が不安定になる可能性があります。
・スキルアップの機会の偏り:参画するプロジェクトによっては、希望するスキルが身につかない、あるいは特定のスキルに偏ってしまう可能性があります。
SESで働くことを検討する際は、これらのメリット・デメリットを理解した上で、自身のキャリアプランと照らし合わせて判断することが重要です。4. SES市場の現状と将来性
ここでは、SES市場の現状と将来性について解説します。4.1 市場規模の推移
経済産業省「特定サービス産業実態調査」によると、日本のSES市場は近年拡大傾向にあります。
年度 | 事業者数(社) | 売上高(億円) |
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2018年度 | 26,485 | 193,697 |
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2019年度 | 27,663 | 204,332 |
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2020年度 | 28,198 | 215,788 |
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出典: 経済産業省「特定サービス産業実態調査」
※情報処理・システム開発サービス業のデータから抜粋4.2 需要の高いスキル・職種
IT人材の不足が叫ばれる中、SES市場においても、高いスキルを持つエンジニアの需要は高まっています。 【需要の高いスキル例】
・クラウドサービス(AWS、Azure、GCPなど)に関するスキル
・データ分析、AI開発に関するスキル
・サイバーセキュリティに関するスキル
・アプリケーション開発に関するスキル
・Webサイト制作に関するスキル
これらのスキルに加え、コミュニケーション能力や問題解決能力などのビジネススキルも重要視されています。
4.3 今後の展望
今後も、IT投資の拡大やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展などを背景に、SES市場は成長を続けると予想されています。特に、クラウドサービスやAI、IoTなどの先端技術分野における需要が高まると見込まれています。 しかし、一方で、働き方改革やフリーランスエンジニアの増加など、SES市場を取り巻く環境は変化しており、従来型のSESビジネスモデルは転換期を迎えているとも言えます。5. 高還元SES求人を選ぶポイント
高還元SES求人を選ぶ際には、還元率の高さだけでなく、信頼できる会社かどうか、契約内容、スキルアップの機会などを総合的に判断することが重要です。5.1 信頼できる会社選び
信頼できる会社かどうかを見極めるためには、以下のポイントをチェックしましょう。・会社の規模や実績:設立年数や従業員数、過去の実績などを確認しましょう。会社のホームページや企業情報サイトなどで調べることができます。
・取引先:大手企業や官公庁など、信頼できる企業と取引実績があるかどうかも重要な判断材料になります。
・待遇面:給与水準や福利厚生、教育制度などが充実しているかどうかも確認しましょう。
・口コミ:実際にその会社で働いている人や働いていた人の口コミを参考にすると、より具体的な情報を得ることができます。
ただし、口コミサイトの情報はあくまでも個人の意見であることを踏まえて、参考程度に留めましょう。
5.2 契約内容の確認
契約内容もしっかりと確認することが重要です。・契約期間:契約期間が明確に定められているか、更新の条件などを確認しましょう。
・業務内容:具体的な業務内容が明記されているか、自分のスキルや経験に見合った内容かどうかを確認しましょう。
・勤務地:勤務地は希望に合致しているか、転勤の可能性なども確認しておきましょう。
・給与:給与体系や支払い方法、残業代、交通費などの支給条件を確認しましょう。
・社会保険:社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険)の加入状況を確認しましょう。